あけましておめでとうございます。
私の自身の新年のご挨拶などについてはまた今日、明日にはさせて頂きます。

が、盟友・駒崎弘樹氏が新著をこのタイミングで出されていて書評を年内に書くといいながら年あけちゃったので、まずはこちらから。


世の中に「お金の稼ぎ方」について書いた本は数多ありますが、「お金の使い方」について書いた本はあまりないと思います。特にNPOへの寄付税制が改正されるこのタイミングにおいては重要なメッセージを多く含んでいる一冊です。

私は著者と鳩山政権下で発足した「新しい公共円卓会議」の事務局メンバーとして参画させてもらいました。さかのぼれば、NPO法人フローレンスの立ち上げ期には、私が代表を務めていた商店街ネットワークの役職を兼務し、共に事業開発をしてもらっていました。私もフローレンス最初のボードメンバーとして大したことはできませんでしたが参画したりと、なんだかんだで7年近くは一緒に動かせてもらっています。

そんな彼とは(確か)2003年に東京財団の研究予算をもらってアメリカのNPO調査に出かけました。そこには私たちが考えていた実態とは異なり、パフォーマンスにこだわり、サービスを通じて得る資金と共に、寄付を効率的に活用していることでさらなる寄付を集めるという連鎖を作り出していました。また、一つのオピニオンを世の中に示すためにお金を使う人たちを多くみました。つまり政府の方針と異なる、もしくは自分の考え方として新たな教育機会を展開している非営利組織・CityYearにおいても、この方法のただしさを世の中に示すためにパートナーたちは実働が出来ない場合には寄付を通じてそれを支援し、世の中のウネリとしていくことで、最後には連邦政府まで動かしていました。彼ら主催する「City Year SERVE-A-THON」に参加しましたが、大変な熱気で、一般人から民間企業、そして政府要人までが集まって動かしていました。この時のソーシャルサービスを軸にして、寄付金をあつめるファンドレイジングイベントということでもあったと思います。

 
■ボストンで参加した、City Year SERVE-A-THON

単に稼ぐということだけでなく、「どう使うか」をもう片輪とし、双方両輪として経営に生かしている非営利セクターの手法が私には強く印象に残っています。

そして今、我が国では税制改革をもって民間側で意思決定した寄付金が一定税額控除対象になっていくタイミングに私たちは立っています。これによって社会構造がより良い方向に持っていければ、中央還流をしなくても十分に社会的に機能する部分があることを示せると思います。

そのために「寄付」を自分たちが望む将来社会への投資、必要であるという社会システムを提供する団体への支持を表明する投票という側面を持っているという考え方を示す必要があります。社会起業は単にカリスマ的な個人だけで実現できるものではなく、むしろ全体の支持者全てのリソースを投入した大きな社会実験であり、それが定着するか否かということ。つまり皆が単なるサービス享受者として客観視するのではなく、自らも参画してもらう必要があるということです。さらに社会制度まで昇華していくためには、大きな運動論的な側面も必要になります。そのためにはまだまだ迫力が足りないのも事実。

私たちの新たな寄付税制も導入されたとしても、誰もこれまでの行動から変化を生み出し、寄付の方法に変更を生み出せなければ、「やはりこんな制度も政策も必要なかった。」ということになってしまう。全ての制度は私たちのアクションと結びついていることを考えなければならないのです。

本著は著者自身のNPO経営を通じて感じた問題意識と共に、これからの社会に対する挑戦状。そして、「お金の使い方」について、私たちに具体的な行動の変化を訴えた一冊です。この本は結論ではなく、これからの社会に対する新たな提言として受け止める必要があります。つまり読んで終わりでは全く意味がない。内容に賛同するのであれば、あなたも今日から共にアクションしますか?というメッセージが含まれています。

お金の使い方を少し変えてみる。2011年はそんな挑戦の1年に私もしたいと感じた一冊でした。ぜひ読んでいない方は一読をお勧めします。

※ちなみにこちらは地味ですが、まちづくりと経営の基礎について書いた拙著も昨年末に重版かかりました。皆様のおかげです。こちらも未読の方はどうぞ。ご感想やご質問等はtwitterでくださいませ。