こんな分野の仕事ばかりをしていると、どうしても役所とのお付き合いが多くなります。勿論、政策的に問題があるものに対して意見をさせて頂き、それから規制緩和につながったり、制度見直しにつながることは大変有意義なものです。現場での制度の壁について、単に嘆くだけでなく、具体的に解決させて頂くからです。この1年間だけでも、内閣府、国交省、経産省、中企庁などでそのような機会を得てきました。有り難い話です。自治体でいえばもっと多くの方々とやりとりさせて頂いたりしています。ただ私は税金ビジネスがメインではないので、基本的には民間におけるプロジェクトの仕掛けを作るほうに労力を可能な限り割いてきましたし、これからはますますそうしなければと感じています。

こんな経験をさせて頂いていると、日本の税金システムがよく分かりました。
役所というのは民間企業でいう「本社」みたいなものです。本社では総務、経理、経営企画、経営管理、知財管理、監査とか色々な業務がありますが、基本的には稼いでいるセクションではありません。組織運営上必要なものをまとめているところです。だから極端な話、システムとかに置き換えができるならば、できるだけ少ないほうが組織としては軽くなります。本社に10人いれば、1人800万円コストがかかれば、8000万円を営業部門のほうで稼ぎ出す必要があります。100人いれば、8億円、1000人いれば80億円の利益を出さなくては養えません。だから、民間では本社に頼む仕事はできるだけ絞り込んでいます。ま、日本の大企業はそれができなくくなっているから低収益になっていることも見られますけど。

話が遠回りになりましたけど、つまり、役所というのはそんな本社みたいなところなのです。行政は自らが自分たちで事業をすることはなく、分配するか、委託事業者を使って仕事しますので、あくまで管理部門なのです。税金を集めて、その予算計画の素案を作り、議会に諮ります。選挙と議会運営にコストかけて、差し引いた金額から、さらにその予算執行のために人員を雇い、管理しきれないものは委託ということで外注します。その会計書類は未だにほとんど書類で管理され、さらに事後的に会計監査をやります。これが税金というシステムに組み込まれたお金の流れです。ま、私たちは自分たちが必要だと考える社会サービスを、行政という本社の人たちに依頼しているわけです。自分たちでできるかもしれないことも含め、依頼をしています。

補助金という名の下に、自分たちが負担しているお金を、さも「もらっている」ような気持ちになるような形で。100円の補助金をもらうためにはそれ以上の金額をちゃんと払わないと、システムは維持できません。つまりもらおうと思えば思うほどに、国全体の負担構造は重たくなります。これは行政のせいでもなんでもなく、私たち自身の問題です。なんでもかんでも役所に依頼してやってもらっている、さらにお金の分配も細かな分野別に分けて各種業界団体や特殊法人を通じてやってもらっている。つまり自分たちの手取りを多くしようと思えば、このフィルターを通じて間で業務コストをかけてしまうので、全体としての負担は大きくなる。

だから補助金の奪い合いは自分たちを滅ぼすことになります。
ま、今は「ほしいものはたくさん」と「負担はしたくない」という矛盾を国債で埋めているので、消費税を他の先進国同様に20%程度にすれば財政はかなり改善すると思われますが、それでも「金ができたんだろ」と思ってさらに役所にいろんな仕事を私たちが依頼すればするほど、その改善幅もすぐになくなってしまうでしょう。ま、全てのしっぺ返しは私たちにくるということを考えて、一人一人が行動する必要があるわけです。しかもこれから長く生きる人であればあるほど。

「あいつがもらっているから俺も」「今年はいくらもらった」という補助金について、手柄みたいに思っているオジさま、オバさまが多いので、あまりにも頭に先日きたので、この話をしました。役所にばかり頼るのが意味が分かりませんが、役所をけなしておきながら多くの人は最終的には役所に頼ろうとしています。頼るなら高負担を受入れ、けなすなら自分で行動しろということです。