夏休み期間ということで、少し本棚ほ整理していたら昔の本が発掘された。昔といっても5年くらい前のものだが、ひとつが沼上幹等著「組織の重さー日本的企業組織の再点検」だ。
日本企業の閉塞感を定性的に「うちの組織は重たい」といったりするが、それを定量的な調査で調べた研究成果をまとめた一冊。しかし単に企業という閉じた組織だけでなく、まちづくりなどを含めた、日本におけるあらゆる物事、組織に一貫する気づきもある。
詳しくは読んでいただきたいが、組織の劣化度として
(1)過剰な「和」志向
(2)経済合理性から離れた内向きの合意形成(競争や顧客よりも内向き)
(3)フリーライダー問題(企業も経済も堕落できる余裕があるがゆえに堕落する,Hirschman,1970)
(4)経営リテラシー不足 (適切な意思決定ができる能力がない経営管理者が多数いる,三枝,1994,2001)
をあげている。
さらにこれをもとに項目として12項目を作り、それぞれを調べるために様々な質問票を作成している。
[12項目:口は出すが責任をとらない、機能別の利害に固執、1人でもごまると大変、戦略審美眼に優れたミドルが多い、自分の痛みと感じない人が多い、我社のトップは優秀、内向きの合意形成、メンツを重要視しているだけ、我社のトップは政治的、決断が不足している、激しい議論は子供だと思われる、対立回避する奴が出世する。]
従来の日本的企業の力は創発力があったが、それが組織が重たくなることで難しくなった。しかし単純なマトリクス組織化したりしてもこの研究では有意とは認められず、有機的組織と機械的組織の療法の特徴が存在している状況をどう作るか、とされている。つまり、一定の統率がとれている環境を作りながら、現場とトップとの情報が頻繁に交換される環境であり、何かを行うときに必要なとっとく対象者を少なくすることだ。さらに、上下の情報流通が行いやすさには、平均年齢と従業員数が影響するとされている。
小さなビジネスユニットで高齢化に気をつけて、ビジネスユニットマネジャーと現場との距離が長くならないようにする。つまりは「小規模かつ構成員の若いチームで事業に取り組むのが、軽い組織を実現すること」である。なおかつ、これを支えるインフラが必要と指摘しており、つまりは上記のようなチームを認知、支援する環境も重要だということ。トップや長老たちが腹を決めなくてはならないわけだ。
なにより日本企業の劣化は、強すぎるヒエラルキーなどの機械的組織にあるのではなく、その有機的ネットワークを強くしすぎたがために、弛んだゆえに起きているという指摘は面白い。つまり緊張感なく、だらだらとやっているのに問題がある。ただそれは、だらだらとやれる余力があるからであって、もはやそれができなくなって潰れる寸前になったら多少なりかわるか、変わらないままに潰れるか、ということなのだろう。
戦略創発が生まれないのは自由な発想が閉じ込められているからではなく、しっかりやることをやっていないからというのは納得感がある。
このような日本的企業の課題については、三枝匡「V字回復の経営」がケーススタディとして面白い。企業再生のプロセスを通じて、上記のような実情を示し、されを解決に導くプロセスを見ることができる。これくらい読み応えのあるケーススタディをまちづくり分野でも作りたいものだ。
まちづくり組織においては、企業とは異なり単一組織ではない、ネットワーク型組織である地縁組織などによって、より複雑に入り組んでいる。さらにインセンティヴが経済成果ではなく、非常に政治的な意味合いが強くなる。ただ、地域活性化のためには経済を抜きには語れず、それが全く達成されずに議論や調整ばかりをやっているのは滑稽だ。
中心市街地活性化協議会をはじめ、なぜ協議会によって地域が活性化しないのか。まちづくりを取り巻く、「組織の重さ」は尋常ではないだろう。上記の重さ測定の指標にあうことはたくさんある。なおかつ政治的な支援などが介入することで、ますますインセンティヴが歪んで、経済合理異性がないことを税金で突き進み、ますます地域を衰退させているケースも少なくない。
だから民間事業として新たな売上やコスト削減につながることを継続して実施するほうが、地域におけるインパクトを生める。ごみ処理でもエレベータでもなんでも共有化するだけで数億円以上の売り上げ効果は挙げられ、賃貸条件の変更によって新たな賃貸借市場もまちなかに誘導できている。さらに電子決済も組織的推進することで、手数料率の圧縮や決済量の増減で地域経済のインディケーターを作ることもできている。
しかもこれを、少人数の若い組織で基本的にやっており、それは既存体制は支持しないが、地域の心ある立場ある人達は支持をしてくれている。このやり方が正しい。あとはよりインパクトを生むために成長すること、ある一定がきたら小規模に戻して、マネジャーの若返りを果たすことが必須だと思わされる。
示唆はいろいろなところにある。日々挑戦と成長をしなければ、と思わされる。
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