遊休不動産活用において現代版家守やリノベーション系の話を整理しています。当然ながらその分野の先駆者の方々が周りにいるので、非常にやりやすいわけですが、私なりにその方法について考えていて、なるほどビジネスモデルの視点から見たら、これは不動産事業を関数的に捉えてやるべきなんだな、という結論に至りました。

現代版家守という手段は、単に古い建物を建築デザイン的にいいものにするのではなく、限られた予算の中で開いている建物に新しい借り手を中長期的に安定して作る取り組みと思っています。そのビジネスモデルは、共有スペースと個人スペースとを組み合わせたりする新しい床割、用途の変更、家賃設定の変更、低投資リノベーション手法などいくつかの方法が組み合わさって成立しています。

ただことビジネスモデルという点でみれば、関数的に整理することができます。

例えば床割を変えるという話。つまりかつての賃貸業は広い1フロアをひとつの企業に貸す、あわよくば一棟借りなら尚よし、ということを当たり前でした。ただこの昨今、広い床が必要な業種業態は限られますし、オフィスだってネットの普及でそんなに人員は必要無かったり、そもそもオフィス以外でも仕事が成り立つようになっています。今、借り手たちは小さな床で十分だと思っている。もちろん安い物件がいいわけですが、彼らは坪単価が安い物件を探しているのではなく、自分たちが家賃として払う絶対額を気にしている。つまり坪単価が5000円か1万円か、1万5000円かではなく、月に5万円払うのか、10万円払うのかはたまた20万円払うのか、というほうが気になるということです。当たり前ですね。ただ狭いだけのオフィス提供ではダメだからシェアオフィスのような共有部分と個人部分とを組み替える床割の変更を組み合わせて、全体としてのバリューを高める。そのために頭を回す時って結局関数的に捉えてやるとわかりやすい。

賃貸借事業は、

賃貸収入=坪単価×面積
(ex. 300,000円=15,000円/坪×20坪)

によって割り出される。だからこれまでの賃貸だと面積はそのまま(1フロア貸しは変更せず)、坪単価を引き下げていくことで新しい借り手を探そうとしています。ただ問題は、前述のように床が小さくて良い、坪単価よりも絶対額のほうが気になる。ただ狭いだけではバリューが高まらないので、共有部分などを作ることでバリューアップする。

300,000円=15,000円×(3坪×4ユーザー+8坪共有部分[複合機、会議スペースなど])

みたいな設計。こうすれば、ユーザーは4名になるため(厳密な複合機リースとかの金額はひとまず抜くとして)月々300,000円/4名=75,000円になる。そうすると市場的には30万円払う借り手はいないけど、75,000円でいい立地で共有環境も揃っていれば借りる人がいるかもしれない。みたいな話です。もちろんこれをもっと色々と複雑にしていってもいいわけで、ただ関数的に見ていけば、どこを変数としていじっていけばいいのか、非常にわかりやすいということですね。

ここの共有部分を考えるのも関数的で、例えば建築系オフィスとかで考えたらどうか、みたいな話をすると、カタログなどのストック場所(私は経験者ではないですが、トイレのカタログとかだけで大変分厚いのが送られてきたりしてそのアーカイブするための面積コストがすごいかかるらしく)、模型みたいなのを作ったりする場所、とかつまりは個々で常に保有している必要はなく、シェアして十分に満足できるものがある。であれば、それは個々人で床を借りるのではなく、共有部分に組み込んでしまうということができます。であれば、先同様に共有部分の機能に合わせて床割を変えていけば全体のビジネスモデルは見えてくるわけです。このあたりは、因数分解っぽいですよね。共通項目みつけてまとめて、単純化していく感じ。そのまま羅列していると難しいように見えて、まとめてできるものはまとめちゃえば、単純になる。

用途変更する場合も床単価を変えて計算をすることもできるわけです。

y=飲食用単価×坪数+オフィス用単価×坪数
をベースに共有部分、投資回収などを見ることができる。yは従来の家賃金額でもいいし、それを20%引き下げた金額に合わせたいのであればそれからやってもいい。投資金額の回収という視点で数字を入れてもいい。場合によっては右側を試算した結果で家賃収入で設計してもいいというオーナーさんの判断もある。

まーつまりは、こういうことをやっていけば物事整理されるなぁと思うところです。
先にブログで取り上げたMorioka3ringsやmercato3番街のケースはまさにこういう形で分析すると非常にわかりやすく、自分たちではさてどうするか、というのに適応できるフレームができあがります。

あとはどういう人を集めるかとかのコンセプトを定めて、具体的な入居者を集めることですね。数式で埋めても、実際のユーザーがいないとまさに絵に描いた餅。逆にいえばユーザーさえ固まれば、この数式は生きてきます。他の変数は自分たちで操作できるもので、相手があることで勝手に操作できないものが唯一、入居者の数です。
つまりは、具体的なビジネスモデルを作り、それを実現するためのコンセプトとかで軌道修正かけながらシミュレートを精緻にやっていくと見えてくるということですね。単にコンセプトとか方法論とかだけでなく、誰にどう使ってもらうか、共有化できるものはないか、とかを組み合わせて考えると頭が整理されると感じています。そのフレームがないと、空転してなんか利用アイデア合戦みたいなのをやり始めて、それが現代版家守だと勘違いしてしまうところもあるのだろうと感じます。

あとはオーナーさんにとっても、1つのところだけに貸すより10個に細切れにかしたほうが経営的な変動確率が低いので安定的な経営が可能になっていくという意味でも、このあたりの変動率による家賃増減とかを平準化して考えればますますもって検討に値することだなと
思っています。このあたりも計算で割り出せますよね。

ま、このあたりはまた改めて説明したいなと思います。


さて、これらの内容を踏まえて、第二回のエリアイノベーターズブートキャンプは12月9-11日で開催予定です。前回同様に5地域限定で開催する予定ですので、案内開始したらまたこちらでもお知らせします。第一回の参加地域でもすでに半年足らずで2地域は事業化し、残り地域でも検討が進んでいたり、うーんまだ難しそうだったりというところもあります。このあたりのステータスについても今度オープンにします。

第一回ブートキャンプの模様については以下をご参照ください。


まーそう考えると、共同浴場のシステムなんかよく出来てて。個々の家にお風呂を作るなんてお金が無い時代に、先頭は自分たちのお風呂を地域で共有化し、利用に応じて課金されるという今時でいうシェアシステムだったわけですよね。トイレも共有してたりするのも。

最近またシェアハウスとかカーシェアリングも流行ってきたり、ノマドが増加したりしているのは、少しパーソナルスペースを固定的に持つという形式から、共有できるものは共有したほうがいいよね、という発想がまた広がってきているのかな。また、それを実現しても昔みたいなプライバシーがなくなるみたいなことがないネットとかの仕組みも組み合わさってきているところは過去とは違うシェアのモデルなのかもしれない。

どちらにしてもこのあたりはホント面白い分野ですね。ますます今後の各地で取り組む事業のためにもメソッドを整理していきたいと思っている今日この頃です。まちづくりの経営力養成講座で基本フレームは整理しているので、あとは具体ケースに合わせて読み解く本はやはり有効だなと思っています。これは近々形にしたいと思います。