先日川上徹也さんから頂いた、「星ヶ岡のチンパンジー」読みました。物語調になっているので、全く難しくなく読める一冊です。中小店舗経営をされている方向けのマーケティングの本という位置づけですが、陥りがちなよくある話をしっかり踏まえているので「あるある」と言いながら読み進めることができるのではないか、と思います。



経営者本人の問題と共に、その弱みにつけこんだコンサルタントが中心的に描かれています。結局のところ、中小店舗経営の問題点は競合などが現れたり、なんとなくうまくいかなくなると、「自分の頭で考える」ことよりも、何かてっとり早い解決策があると思ってしまうことがある。その時にコンサルタントや占い師とかにハマってしまうということかと思います。そして、コンサルタントはやはり稼ぐために「お金を使う」ことをどうしても要求していく。それはリターンで取り戻せます、と将来の利益を理由に今の利益を犠牲にしろ、と言う。

結局は資本力で勝負できない中小店舗は、マクロ的な統計分析や体力勝負になる競争に自ら参入するとそれだけで失敗する。かといって、何もしないわけにはいかないので、別軸で戦おうということ。そして、単なる戦いではなく、つまり競合との売上や利益の勝負ではなく、自分のやりたい仕事で生活していけるというボトムラインを中小店舗経営者側が再認識した時に、戦い方を大きく変えることができる、というところを示しています。

競争戦略上、価格差別化などの中小店舗経営における限界を示した上で、商品はもちろんですが、やはりそれに付加価値を生むための補助的サービス差別化、そしてブランド差別化とかをしっかり考える事を、ストーリーブランディングの専門家である著者らしく書いているところも印象的です。良い物作れば、良い物仕入れれば売れる、という価値観への問題提起です。もっと店にはストーリーが必要だという言い方をしていますが、つまりは自分が提供できる価値は商品以外に何があるんだ、ということと向きあおうということですね。

あーなんか無意識に自分ってこういう仕事の仕方になっているのかもしれない。
つまらない仕事をしていては中小店舗経営の醍醐味はない。楽しんで商売をするためには何が必要なのか。自分の原点に立ち戻り、自分が喜ばせたい人を意識して、正しい道をしつかりと進んでいくこと。つまり自分の頭でしっかりとそれを考えぬくことが必要だということを示しているように思います。

巧みなマーケティング論の本というよりは、中小店舗経営者に向けた自己啓発とマーケティングへの気づきを与えようとした一冊なのだろうと思います。

価格も手頃で、読みきるのも1時間もあれば十分。移動時間などのちょっとした時間を使った、息抜きに少し読むと、少し胸熱く考えさせられる一冊だと思います。