駐車場共通駐車券事業を行っている中心市街地も多いかと思います。昔から共同事業の収入源として注目されてきた駐車場事業は、かなりの地域で取り組まれている一方で、かなり衰退してから駐車場がないからということで作った地域はなかなか苦戦しているのも事実だろうかと思います。

以下は比較的鉄道などの公共交通利用の多い、中規模以上の都市圏では色々と有効な手段があるのだろうなという内容です。

まずパーク24(国内最大手の時間貸し駐車場経営会社)が運営する駅前周辺の駐車場でパーク&ライド割引を積極的に導入していく方針ということです。既に昨年末までに東武鉄道、JR、多摩都市モノレールと提携して10カ所の駐車場で導入を開始。今年中に数十カ所まで拡大していくと発表しています。

昨今の原油高や不況などで自動車通勤率が低下していること、一時期より競争も激化して、いたるところに時間貸し駐車場が出来たことなどから、パーク24が都心部の駐車場も利用率が低迷していたようです。そこで通勤や買い物に都心部に出かける顧客を、同社の駅前駐車場に引きつけるための価格差別化戦略としてとったようです。おそらく電車を利用して通勤や買い物に行く顧客は、他の利用者よりは「長時間利用してくれること」、「利用頻度が高いこと」は言えるはずなので、いいお客さんなのでしょう。またパーク&ライドという使い方を明確に示すことで、あそこなら安く止められるから、バスじゃなくて車で駅までいって電車でいこうか、という動機付けにも少しはなるのかもしれませんね。

既に実証実験で成果が出ているようで、埼玉県幸手市の駐車場では08年4月の導入以降、半年で4割近くがパーク&ライド割引利用者が占めるようになったほどとのこと。

そして鉄道利用者の判別にSuicaやPASMOの利用履歴を利用しているとのこと。これも従来よりも確実かつ安価に鉄道利用者を判断できることから、一気に導入することにしたようですね。

■パーク24が「パーク&ライド割引」を強化-駅前駐車場の稼働率向上に効果-

また別に、商店街などでの利用に関しても似たようなケースがあります。京都KICSでは地下鉄を利用してきたお客さん限定で、京都内の約1200店舗にも上る加盟店舗でクレジット利用すると、ポイントバック(Pitapaとして戻される)があるというキャンペーンを実施していました。自動車利用ではなく鉄道利用をしてもらうことでエコといった切り口ですね。

■地下鉄&ウォーク 電車deエコ レール&ショッピングin京都2008

これはPitapaという交通系ICカードと、京都市内で展開するKICS加盟店というクレジットカードのインフラを組み合わせて実施した企画と言えます。
Pitapaの特徴は後払い式という、Suicaのような事前にチャージして利用するものとは違います。簡単に言えばクレジットカードと同じで、まずはPitapaで地下鉄などを利用しておくと、あとで請求がきてまとめて支払うという形式です。この特性を利用して、「地下鉄利用した人+まちで買い物してくれた人」を判別し、ポイントバックしてあげるという企画が可能となっているのです。

クレジットビジネスと紐付いて手数料の一部やKICSが持っている販促費?(未確認)をポイントバックの原資としているのかと思われます。そのため、1店舗使ってくれたら運賃の半額、2店舗以上使ってくれたら運賃の全額キャッシュバックとされています。(購買額500円以上利用という制約)

これもまた従来の各店舗が手作業でやったりするととてつもない労力がかかり、不正利用もあるかもしれませんが、機械的にできるようになったからこそ比較的お手軽で出来るようになったマーケティングと言えるでしょう。

公共交通の拡充と利用促進は中心市街地活性化でも強く語られていますが、利用方法を明確に示して利用を促進するインセンティヴを補助金とかだけでなく、事業的に確保することが必要であると思います。パーク24は完全な事業性、京都KICSも一定の事業性を持って本企画を推進していると言えます。公共交通利用促進を考える上では、従来の利用方法(単純な通勤通学や買い物)というのだけでなく、他の都市機能と組み合わせて価値を出していく方法も柔軟に検討すべきなのでしょう。そしてそれがICカードの普及によって比較的簡易に計画、実施できるメリットとも言えます。

このあたり事業モデルと技術インフラ活用を検討すれば、より一層都市交通の利用方法は広がると思います。特に地方都市においては、周辺地域から顧客を広く集めている中核的商業集積地域があります。この場合、直接自動車で来ることだけでなく、周辺地域からバスや電車を利用してくる顧客もいます。この際に、彼らにインセンティヴをつけることも可能なのです。例えば岐阜駅から名古屋に買い物にいく顧客に対して、岐阜駅周辺での駐車場料金を名古屋市内の商業者が負担してあげることだって上記のようなシステムを用いると出来るわけです。

ともあれ色々な工夫が可能な時代が来ているなと感じる今日この頃です。