あまり中心市街地活性化の課題分析の際には、経済学的分析が主流のため、経営的分析は行われません。私はこのブログの題名にもあるように、そもそもまちの再生はプロジェクトであり、事業であると考えています。すなわち経済分析と経済施策だけで対応可能な内容ではなく、経営的に目標設定から戦略立案、業務管理、成果評価などの一連の体系的な対応がきれいごとではなく、実現可能な形で進める必要があります。

私が取り組む中心市街地活性化事業は基本的にビジネス的アプローチに即して進めることが基本でやってきています。その際の第一受益者は地権者と事業主の2つとして設定します。それ以降の副次的効果を得る第二受益者は自治体、第三受益者は市民と設定します。

基本的にこの第一受益者の利益最大化を実現することが目的です。ほぼ中心市街地中心部は商業用途の場合が多いため地権者、事業主に絞り込んで彼らを財務一体的に捕らえると非常にクリアに見えるものがあります。中心市街地をひとつの仮想会社として見つめて(日本株式会社みたいなものですね)、その変化と対応が必要な点について整理していくだけでも、取り組むべき課題の内容がこれまでとかわって見えるはずです。

少し基礎的ところで考えてみます。

ビジネスを営む上で重要なのは、「利益生み出すこと」と「キャッシュフローを生み出すこと」にほかなりません。これと同様に中心市街地が地域経済の中核的役割を果たし続けるには、利益とキャッシュフローを生み出していくことが求められます。利益が出なければ配当も内部留保による再生産ができず、キャッシュフロー(支払える現金が手元になくなれば)が底をつけば事業は存続ができなくなります。

まず事業を立ち上げて、利益を出していくまでには簡単に分けると三段階ありますが、これらに沿って考えてみましょう。

1)資金調達し、投資して資産取得を行う
基本的に中心市街地経済にフォーカスすると、ビジネス形態は大きく2つに分けられます。1つは不動産ビジネス、もう1つは物販・サービスビジネスです。この2つが一体化している伝統的な地権者兼商店主もいます。

このどちらのビジネスでも同様に、その所有者・経営者が手持ち資金かもしくは個人で借り入れをして、不動産を取得、もしくは仕入れを行うことがビジネスのスタートになります。簡単に言えば、つまりは投資して、売り物を得ることが事業の出発点なわけです。
 
2)資産を売上に変える
取得した資産を元に、テナントに貸して家賃収入を得る、もしくは販売することで売上げを上げることが出来ます。
特にこの点がいわゆる経営課題と称されるときに特に注目される部分です。

当然、取得している資産価値より高い金額で売上げを上げることになります。これが付加価値であり、その差額から各種費用を差し引いたものが営業利益に繋がるわけです。

実態を見てみれば不動資産の取得金額より各店舗への家賃は高く設定、商品も仕入れより高く価格を設定することで収益を得ているわけです。不動産であればその土地での経営を通じた収益力に応じて、商品であればその便益を基準としながら値付けを行うことになるわけです。その点、各都市を代表する中心市街地は立地的な優位性や集客性の高さから家賃は当然高い設定が可能なエリアでしたし、取り扱い商品やサービスの付加価値も高い物を中心に取り扱うことが多かったわけです。また物が不足している時代には、希少性の高さからより高く価格設定をすることも可能だったりと、売上高は市場の影響を強く受けるものです。

ともあれ、資産を取得して、それを販売することで売上げを上げることが二番目のプロセスになります。

3)売上から費用を差し引いて利益が出る
そして前述の資産をベースにした売上げから、いわゆる営業費用などを差し引いたものが、利益にあたります。その他事業外収益などを盛り込んで経常利益、純利益が生み出されます。
ともあれ、利益が出ることで元々の資金への配当を行ったり、もしくは内部留保して再投資を行ったりできるわけです。

まちづくりでいえば、この利益がより景観性の高い建物を建築することに繋がったり(豪商などの建物)、お祭りなどの地域文化性への資金拠出などに繋がってきたわけです。利益なく、各人の生活維持だけがやっとというところには、余計な遊びがありません。

今回説明したような基本的な経済活動のサイクルに注目すると、中心市街地経済の抱える様々な課題が見えてくるようになります。投資をすること、利益を生み出していくことが重要な課題であるという認識を持つと、中心市街地経済がなぜ衰退したのか、また衰退したことによってどのようなネガティヴスパイラルに入っているのかという課題発見ができるようになります。またさらに、どこの部分からであればそのスパイラルを変えられるのか、ということも見えてくるのです。

少し長くなりましたので、明日続きを書きます。

財務マネジメントの基本と原則
財務マネジメントの基本と原則
デイビッド メッキン,國貞 克則