イギリスのATCM(AssociationTownCentreManagement)が行った、2005年に発行されているBIDパイロットプロジェクトに関する報告書が、同団体より発行されている(65£)ので、取り寄せました。

イギリスでもBID(BusinessImprovementDistrict)が法律で制定されて各地で本格的に導入が始まっていますが、その前に本当にイギリスにおいて効果的なのか、またどのような問題があるのか、などを検証を行いました。イギリス国内の22カ所をベースとして、3年間にわたるBIDを試行的に行った内容が、この報告書には記載されています。

内容的には以下の主要ポイントに関して、個別の具体的な事例等を元にQ&A形式で説明されているものです。

1.ビジネスプラン
2.ファイナンス
3.公式な合意形成
4.パートナーシップ
5.ステイクホルダー
6.投票制度

例えば、ファイナンスなどではどのような方法で負担金のレートを設定するのか、またどのように徴収すると効果的に徴収できるのか、といったような具体的な疑問点にいくつかの方法を提示するような形です。また支払いってもらった負担金と業務の効果とをどのように結びつけて理解してもらうのか、といったような内容に関してはBedfordのBIDにおけるBeselining(評価基準法)が紹介されています。同団体では11の1ページで説明した自分たちのサービスの評価基準を皆に公開し、目標水準への達成時に応じて「金・銀・銅」などのわかりやすい表現でモニタリングできるようにしたことが地元の方々の支持を集めたポイントであると指摘しています。
また地元紙に定期連載で、事業の進捗報告や先の達成度合いなどを常に情報発信し、公開性を可能な限り高めた運営を行っていったそうです。

このブログでも何度も指摘している点ですが、まちづくり活動や地域活性化事業などまち絡みの活動や事業は、限りなくクローズトな内容であることが多くあります。何をやっているのか、入っていない人には全くつかめないことも少なくありません。商店街などでも大規模な予算組みなどをしている事業などでも、この効果設定なども満足に行われず「やること」で精一杯という現場の問題が、そのまま全体の組織運営にまで場当たり的なものが日常化してしまっているという点もよく指摘されます。その上では、上記のような情報の透明性を如何にして高めるのか、といったような点に関しても非常に参考になる点かと思います。

本題に戻ると、このようにイギリスにおける2003年からのBIDパイロットプロジェクトを参考にして、今後BIDを設立・運営する人々に対してある程度参考になるような内容にはなっているのかと思います。日本でも活性化事業も単に事例紹介やマクロ統計を使った定量的な評価指標だけでなく、このようにちゃんとケースもメソッドで整理して定性情報と定量情報とをバランスよく使い分けたような、つまりは次に続く人たちが参考にできるような内容だと良いと考えさせられました。(BID全般に関しては、IDAが発行しているBIDSecondEditionなどはさらに全世界からケースを集めたりもしているのでもっと詳しいです。)

どちらにしても「ただやる」のと、「考えながらやる」ことは全く違います。また「やりっぱなし」と「やったことを整理して残す」ことはさらに大きく後々に影響を与えるものだと感じました。