先日、偶然行ったモールで"The Body Shop"に偶然立ち寄りました。ボディショップといえば、言わずとしれた、英国発の世界的なソーシャルベンチャー企業です。

彼らの提供する価値として、「5つのバリューズ」を宣言しています。
1.化粧品の動物実験に反対しています。[AGAINST ANIMAL TEST]
2.公正な取引を通じて、地域社会を支えています。[SUPPORT COMMUNITY TRADE]
3.自分らしい生き方を大切にしています。[ACTIVE SELF ESTEEM]
4.ひとりひとりの人権を尊重しています。[DEFEND HUMAN RIGHTS]
5.私たちをとりまく環境の保護に努めています。[PROJECT OUR PLANET]
※TheBodyShopのWEBより引用

これらの中で、今回店舗で展開されていたのが、4番目の人権保護に関するコーズ・リレーティッド・マーケティング活動でした。米国に調査に行った際に、BEN&JERRY'Sのショップで見たことはあったのですが、国内ではあまり意識していなかったこともあるのか、全面的に見たのは初めてでした。クレジットカードなどのケースは日本でも沢山ありますが、実際の物販などをしているショップでピンクリボンなどの運動ではなく、何気なく見たらやっていたのが新鮮でした。

今回、ボディショップで展開していたのは、「STOP THE VIOLENCE IN THE HOME(反対!家庭内暴力)」というキャンペーンでした。いわゆる、DomesticViolence(DV)に対する反対活動です。ただ、反対運動のポスターを張り出すだけではありません。ここにコーズ・リレーティッド・マーケティングが、用いられているのです。

コーズ・リレーティッド・マーケティングとは、
社会が直面している健康や環境などのさまざまな問題に自社のブランド/サービスを関連づけてキャンペーンを行い、経済的・人的に支援することで、結果として営業利益を上げるマーケティング活動。(NTTアドホームページより引用)
※詳しくは、こちらのWEBを参照のこと

つまりは、社会的問題解決をテコにしてマーケティング活動を行って、通常の営業活動にも好影響を与えるようにする手法を指します。以前からこのブログでも何度か取り上げていますが、起源は米国におけるアメリカンエキスプレス社が、自由の女神修復キャンペーンを展開したところに端を発します。自由の女神修復キャンペーンでは、クレジットカード利用額の一部を自由の女神修復基金に寄付をするということを宣言し、自分たちの消費の一部が寄付金として流れる、ということを消費者に対して訴求することで、新規加入数、利用総額が大幅に向上してアメックスの事業としても大変好影響だったというものです。

通常、企業の社会貢献活動は1%クラブのように、企業の最終利益から一部を寄付するというのが旧来の日本企業のメセナなどでの一般的な手法でしたが、諸外国ではこのようにマーケティング活動に社会貢献を生かすということを積極的に行っています。

今回、ボディショップで行われているキャンペーンも商品(キャンペーン商品に限定)の売上の5%が、支援団体に寄付されるという仕組みです。実際に寄付先はDV被害者の救済を目的としたシェルター事業などを展開するNPOとなっています。これにより該当商品の売上が一般的な時期以上に伸びて、結果的な寄付金額も伸びることで支援団体がより効果的なサービスを展開できる、という仕組みです。
またこのように商品に説明を添付することで、社会的な関心を高めてゆくことも出来ます。企業としても社会的意識の高い存在として、ブランド形成などで良い影響が想定できます。


■店舗の一番目立つスペースでキャンペーンを展開

ここでは「企業の利益追求」と「社会的な役割」とのバランスを図った一つの経営的な手法としてコーズ・リレーティッド・マーケティングがあることが分かります。また、企業の存在意義としてサービスを通じて顧客に何か価値を提供するだけでなく、より拡大したステイクホルダーに対するメッセージ性を持つことで、実際に顧客とのリレーションシップにも大きな影響を与えるわけです。

世界的に展開する企業が、何らかの社会的なメッセージを自らの事業の「核」として設定する効果は、非常に大きいわけです。単に事業外の社会貢献ではなく、事業を通じた社会との関わり方、を追求する姿勢は、最近の日本における急成長企業に見られるモラルのあり方に非常に問題提起を行っているように感じます。

世界的企業を数多く生み出している日本において、このような社会的メッセージ性を持つ企業がまだ比較的少ないように感じるのは、大変残念なことです。しかし広義で社会的な貢献などを捕らえると、日本企業の人本主義などは非常に社会的な意味を帯びているかもしれませんが、実際のサービスなどに組み込むという意味で今回指摘しています。つまり社会貢献や寄付税制などの問題ではなく、自らの事業を通じた社会との関わり方を再考する必要があると考えさせられるわけです。

コーズ・リレーティッド・マーケティングは、純粋な社会貢献ではないかもしれないですし、利益追求の最も効果的な手段ではないかもしれません。しかしながら、双方に対して妥当な効果を与える方法として、非常に「バランスのとれた」方法論であると感じずにはいられないです。