久々にLRTに関する話題を取り上げます。ちょうど講義のケースで知ったものなのですが、webで調べてみたら結構レポートが出ているので、有名なものだったようで不勉強でした。

内容としては、ドイツ、ベルリンの南に位置するドレスデンにおいて行われている、LRTの貨物利用です。日本でも度々報道されるLRTの導入ですが、これまでは旅客輸送しか私は存じ上げなかったものでドレスデンでは貨物輸送にも利用されているというのです。
丁度、大学院で授業を受けている根本先生が新聞への寄稿で詳しく書かれていましたが、下記のwebでも詳細が書かれています。また参考文献としては、戸上敬愛「路面電車による貨物輸送」一橋大学交通研究室、2002年も細かく書かれているそうです。

ドレスデンには、フォルクスワーゲン社がガラス張り工場という(詳しくは下記の同社のweb参照)特異な工場を立てており、ここは完全手作業で作る高級車ラインを持っているそうです。この工場が敷地が狭いことで在庫スペースが設けられず、部品輸送などのために4km離れた倉庫から路面電車を利用してジャストインタイムでの輸送を実現しているというのです。それがカーゴ・トラムと呼ばれているものです。
一日当たり100台弱程度のトラック輸送量に代わる能力を持っているそうですが、短い4km区間だけにトラムを使っていることで全体的に見るとコスト面でも高く、環境負荷増加に繋がっている可能性は高いそうです。しかしながら、一つの街のシンボルとしては大きく環境重視などのメッセージ効果などはあり、評価されているということです。

ただこのような貨物輸送をも路面電車で可能な状況を考えると、単に旅客輸送だけでない新たな収入モデルを考えられるのではないか、と思わされました。国内においても、LRTの見直しなどで貨物輸送のドレスデンのケースなども取り上げられているようですが、街全体での輸送の見直しなどを行わないと、中々全体最適にはならないようですね。
路面電車の経済的自立性を考える上では、貨物輸送というのは大変大きな意味を持つように考えさせられました。米国などの鉄道創成期においても貨物輸送は大変大きな収入源になりましたので、鉄道事業としてはやはり旅客以外の方法なども検討することが有効なのかもしれません。

■フォルクスワーゲン社の宣伝サイト
■「見せるための工場~フォルクスワーゲン・ドレスデン工場~」・ベルリン産業情報センター
■DBJ・フランクフルト駐在員事務所報告75(2001年10月)

カーゴ・トラム(ドレスデン)
■カーゴ・トラム(ドイツ・ドレスデン市内) webより引用