いよいよこの本の紙版も発売になったので、改めて木下なりに感想を書きたいと思います。
この本は何が起きても「無理」と諦めない、過去のやり方にとらわれず「自分の頭で考えてやり方を生み出す」ための一冊です。
この本の著者で、図書館に関する本も出されていた猪谷さん Chica Igaya にTwitterで3年ほど前、「オガール祭りと合わせたシンポジウムに来ませんか?」とお誘いしたら「ぜひ!」ということでお越しいただいた。その時に「オガールは図書館だけでなく、全体の仕組みをみてください」と勝手な熱弁営業トークをしたら、まさか本まで出されるとは!!笑 けど本当に改めて読んで、よくここまで伏線をまとめられたなぁと思ってしまう素晴らしい本です。オススメ致します。(上から目線ですみませんw)
始めて岡崎さん Masanobu Okazaki と会ったのは、今からもう6年ほど前。2010年のことでした。
その年の経産省の中心市街地活性化全国フォーラムで講師を務めた際に、清水さんが私の前の講師をされていて私の話を聞かれた後に「木下さん、紹介した方がいます」とお話いただいてお会いしたのが岡崎さん。
盛岡で3ringsというリノベーションプロジェクトをされていて、私も同社が設立された時からwebでメッセージで的確で面白い取り組みしている会社だなぁーとチェックしていた会社だっただけに、色々とインタビューさせてもらったのを覚えています。
さらにこの本にも出てくる肴町商店街の佐々木大さんなどもご紹介いただいて、一緒に会社を設立するなどご縁がどんどんと拡大していきました。
そしてその時に連れて行かれたのが、この写真にある荒野であった今のオガールエリア。
最初の本の表紙と同じ場所ですが、同じとは思えないと思います。
雪がとけてぬかるむ泥地を前に岡崎さんが「次のプロジェクトはここでやるんだ!!」という話をされていて、「いやー岡崎さん、これはやめたほうがいいんじゃないですか?(笑)」なんて話をしたのを覚えています。
その後、オガールエリア全体のマネジメントなどの勉強会などに色々と呼んで頂いたりしているなかで、どんどんとオガールプロジェクトは進捗。
フットボールセンターが開業し、さらに公民合築施設・オガールプラザが開業するのが2012年。その後オガールベース、そして来年にはオガールセンターが開業していく。
2011年にできたフットボールセンター
2012年にできたオガールプラザ
この頃はまだオガールエリアも空間がまだまだ空いていました。
オガールベースが開業。日本初のビジネスホテルとテナントと合築された完全民間経営のバレーボール練習専用体育館。
2016年のオガール祭り。
このような変化を起こす過程でニューアーバニズムをベースにしたプランニングからオガールプラザの建築までをサポートされた松永さん、まちづくりで民間資金調達を可能にしたファイナンスのプロのぐっちーさん、オガールベースという人生最後の新築をした嶋田さん、高断熱を切り口にしたエネルギーまちづくりをオガールタウンのプログラムを作り上げた竹内さんなどなど、挙げたらきりがない、この本にも出てこない日本きっての多くのプロがここに集結していく。
ここで重要なのは、所謂「まちづくりのプロ」ではなく、オガールに必要なちゃんとした専門的なビジネスをしているプロが集まったことです。
それはなぜか。
大したフィーを支払わないのになぜそれだけの全国区きっての様々な企業などからも引っ張りだこの人たちが集まったのか。
それは3.4万人の人口規模で財政も悪く、過疎地でも離島でもない中途半端な都市圏立地の地域で、民間が主導して泥濘んだ土地の開発を推進する。誰もきいたことがないPPPとかいう方法に地元からは「黒船来襲」と猛反発が起こる。これだけ聞けば誰でも「絶対に無理」と思うなか、諦めずに自分たちのまちは自分たちで守りきり、そして将来に向けてバトンタッチをするのだと覚悟をきめた人たちの合理的でクールで、けど情熱的な取り組みがそこにあったからです。
だから全国区からプロが集結していった。
何事も諦めた時に本当に終わりなんですよね。安西先生ではないですが、「あきらめたらそこで試合終了ですよ」という話です。この本はそういう本です。
諦めず、集まったプロたちも入れて、民間は事業開発と資金調達と向き合い、岡崎さんがいう金融機関との「愛の1000本ノック」をクリアしていった。政治・行政は様々な批判に対して100回以上の住民説明会を町長が先頭にたって行い、さらに140回以上の公民連携特別委員会を議会では行った。そこまでの覚悟を決めて、そして実行したわけです。政治行政に問われるのは、「岡崎さんのような民間の担い手がいない」とか嘆く前に政治行政にできることを全力でやっているのか、ということです。
視察見学事業を共にマネジメントさせて頂いていてなんですが、オガールを学ぶ際には表に見える建物を視察しても全く意味は無いのです。古い頭でオガールを視察すると「図書館とカフェと産直を一緒にしてたてれば成功するのか」という安直な解釈になったりします。全くもって自分の頭で考えていない人たちが、結構多発します。そうそれは、全くプロセスから物事を捉える力がないから。
重要なのはそのプロセス。
最初はどう考えても上手く行かない、「うちの地域では無理だったんだ」とか「こんなだけ困難な条件では無理で仕方ない」と環境のせいにして諦めたくなる環境下で、政治、行政、民間のキーマンたちが諦めずに現実に即して挑戦を続けた。適切な仲間を集めながら挑戦をした。妥協をせずに「あるべき姿」を歪めずに進めた。
その挑戦のプロセスを学ぶのにこの本は最適です。というか、この本を読んだ上でオガールに行かないと何もわからないといっても過言ではないでしょう。
まずはこの本を読んだ上で、ストーリーとデータとしてのオガールを学び、その上でちゃんと視察見学申し込みをしてハードと雰囲気としてのオガールを体感する。それが大切です!!
ということで、まずはこの本を読みましょう。
毎週火曜配信の業界有数のまちづくり週間情報誌 「エリア・イノベーション・レビュー」 初月無料。お気軽に購読ください。 http://air.areaia.jp/
【5/7発売】木下斉「まちで闘う方法論-自己成長なくして、地域再生なし-」
【2刷御礼】飯田泰之・木下斉ほか「地域再生の失敗学」
[10刷御礼] 木下斉「稼ぐまちが地方を変える-誰も言わなかった10の鉄則」 [7刷御礼[ 木下斉[まちづくりの「経営力」養成講座] (地域で事業に取り組む時の本) [4刷御礼[ 木下斉・広瀬郁「まちづくり:デッドライン」(リノベーションまちづくりの本)
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地元の将来に危機意識を抱く、町長/藤原(孝)氏=63才との出逢い。国の特殊法人に勤務していた経歴から、「公民連携」理論を持ち込んだ岡崎氏の単刀直入さ。それを受け容れて焚き付けた藤原町長の度量。
さらに「公民連携」最新理論を学ぶため、東洋大学の社会人大学院の門を叩いた岡崎氏。金曜夜の講義2コマ+土曜の講義5コマを受講するため、新幹線の盛岡↔東京を往復した「彼の情熱」には、大いに共感しました。
この二人の出逢いが、その後の新たな「ヒト」「カネ」「情報」を巻き込み、好循環を生む起点となったことは間違いないです。逆に云えば、「岡崎氏」と「藤原町長」に相当する人材が居なければ、「ほかの町」で紫波町と同様のまちづくりプロジェクトを軌道に乗せることは難しい訳です。
《地方って・・・自分たちがどういう暮らしをしたいかということをベースに、まちづくりをしていけば、トップランナーになれるんです》(第13章 幸せな町には幸せな人生がある)。《・・・ほかの町でオガールプロジェクトのような取り組みは不可能だと諦めてほしくはない。ただ、相当の胆力が求められることは間違いない。・・・未来はあなたの町でも、あなたの手でつくれるはずだ》(「あとがき」)が、着地点でしょうね。
<追伸>
昨秋の東北震災復興視察行では、福島・宮城・岩手の各県・各市町村の「まちづくり」取り組みを見て来ました。「紫波町に続くべき、ほかの町」は、東北震災被災地の何処かであってほしいものです。例えば、女川町(宮城県)の「駅前にぎわい拠点」=ハマテラス=シーパルピア、等の発想やコンセプトは、本書の主張(ロジック)を再照射してみる必要がありそうです。
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